これは私の新作です。上:初診、下:1年後。左下7近心に注目ください。
骨欠損の修復に使ったのはUnbelievable Supernatural Osteogenic agent(C先生名言より)です。略してUSOです。
先日、座長のS地先生は外来演者に気を遣いやんわりとしか質問されなかったのは流石だなあと思いました。皆が思っていたであろう「咬合性外傷では?エンドは?歯石がたくさん残ってる、、、」の疑問は、「臨床実験」なのだから眼をつぶるとしても、そうした要素を上回るFGF2の威力が確かにあるということで納得することにしました。そして私(達)だったら、通法通り根管治療、咬合性外傷の除去、初期治療の徹底をして再評価の後にピンポイントで適用するだろうから、もっと確実な効果をあげられるに違いないと想像していました。
私は「ホケンへの導入」には反対です。ただでさえプローブやスケーラーを使うことがない(=歯周治療をしない)歯科医院が数多あるというのに、この新薬を「塗り」さえすれば治るんでしょ、という風潮は、より多くの初期〜中等度歯周炎が未解決になり、歯科医の「眼」も育たなくなると思うのです。
以上、あくまでも私見です。
盲目下ではリーマー、ファイルは舌側根管にばかり入り込み、肝心な頬側根管にアクセスできません。かかりつけ釣り道具店で買ったヘッドライトをくくりつけたマイクロスコープを覗き頬側の壁を削りとりながら根管口を探す、、、う〜ん時間が過ぎてゆく、、、、、。
ようやく2根管に滑り込ませることができました。正方線投影と偏心投影にて確認
CTでもみるとおり皮質骨が肥厚しておりクレンチングがあることがわかります。あとは歯根破折の予防に注意が必要です。
左下4部歯肉腫脹疼痛。X線写真から一目でエンド病変とわかるものの(左)、根管治療をしても一向に回復の兆しがみえないのです。これはただ事ではない、とCT撮影。ボリュームレンダリングで頬側皮質骨の大きな穿孔が確認されました(右)。
念のためアクセサリーポイントを挿入して撮影してみました。頬舌側2根管にしっかり分岐しており、(根管口がみつけられていなかった)頬側根管由来だということがわかります。
ままあることですが、CTで原因が追求できたとしても、それが治療に反映できなければ片手落ちというものです。〜続く
30代後半女性(当時)。右上6周囲のアタッチメントレベルは'96~'97に大差ありません(黄矢印)。ところが'01で大きな変化が現れました(赤矢印)。4年の間に生活に大きな変化がありそれが引き金となって夜間就寝時に自分で自覚するほどの強い歯ぎしりをするようになったとのことでした。ナイトガードの使用と自己暗示療法を開始しました。
いずれも奏功しアタッチメントロスは停止したようです。'01~'11まで変化なく骨レベルは安定しています。
'97当時にはなんの問題もなかった右下1ですが、'06再来時には垂直性(すり鉢状?)骨欠損となっていました(黄矢印)。プラークコントロール不良に加え咬合性外傷が原因と診断し咬合調整です。
X線透過像が縮小しそれを取り囲むように歯槽骨頂線である皮質骨が太くなってきています(緑線)。根面との間はLJEの獲得でしょうが、プローブは入らず何の問題もありません。骨レベルをそろえるなら抜髄~挺出? いいえ、垂直性骨欠損→骨レベルを平坦に、だけがゴールではありません。。
クレンチャーです。主訴は左上6部歯肉腫脹、左下6違和感。
これをCT画像と比較しますと
青:皮質骨を穿孔している根尖病巣 赤:頬側の骨レベル 黄:舌側の骨レベル
ボリュームレンダリングで再構成しました。近心根舌側に破折線です。
'98初診当時28歳女性、近医からの紹介で来院。犬歯近心X-P透過像に注目。
プラーク歯石はたくさんついているので「侵襲性歯周炎」の定義からは外れるかもしれませんが、この若さで上顎はすでに無歯顎(!)、他の残存歯もぐらぐらですから若年性の重症例であることは間違いありません。
初診から2年後とメインテナンスに移行10年後の現在です。初診時のx-p透過像→骨欠損→保存不可能 ではないことがわかります。
この12年間、ちょっと油断すると危なくなる時期を幾度も乗り越えてきました。
'06 1再初診。60代女性。右下1歯根周囲にx-p透過像がみえます。
左x線写真の通り9年前には問題がなく、この後に発症。
約半年で治療を終えメインテナンスです。
6か月ごとのメインテナンスが続いています。4年経過したレントゲンの比較です。
プラーク、歯石はなく歯肉は安定。もちろんプローブは入りません。歯根周囲の骨透過像はそのままながら時間の経過とともに周囲の皮質骨がだんだん分厚く安定しています。このような安定の仕方もあり、なことは歯界展望3月号に記載のとおりです。
'09 2.25記事「重症例」第1症例の30代男性
モチベーションが良好で、一度ご説明した後、次回の来院時にはすでに歯肉が大きく変化していたことがとても印象的でした。現在初診から約一年経過しました。
下顎前歯に注目ください。左:初診時、根尖を超えて骨がないようにみえますが 右:一年後。
この間、防カビ剤なんて怪しげな薬はもちろん、特殊なメンブレン何も使っていません。私たちが使っているのは患者さん自身の歯ブラシと、卒直後のコンビニ美容歯科医さんたちが「凶器」とホームページに書いているよくシャープ二ングしたスケーラーのみです。
本ブログ検索条件人気No.1「歯根破折」です。
'96 6初診20歳代女性 主訴は右上臼歯部冷水痛でした。延長ブリッジ(前医による)ポンティック下の智歯がカリエスとなり歯髄炎です。ブリッジを撤去したらこの智歯が速やかに7の位置にまで挺出してきていることも興味深いのですが、注目は右上5根尖病変。その後 13年間の経過です。
'96 6右上5X-P透過像 根管治療〜'96 10病変縮小傾向
'98 11再発〜根管治療 '99 1ビタペックス仮根充
'99 3 根管充填 '00 3 病変縮小 その後数年間は安定をみていた。
'05~'09 フィステルを伴い病変が再発 マイクロスコープ下で歯根破折を確認。保存は断念
根管治療の成否はレントゲンで判断するしかなく、完治は難しいことは否めませんが、'98遠心まん中付近にあるペーストの溢出は側枝由来だろうと考えていましたが、実は既に歯根破折していたのかもしれません。近心延長ブリッジという少し無理のある設計が歯根破折の誘因のひとつかもしれませんが、今回は「犬歯切削を10数年間遅らせることができた」ことを評価したいものです。
歯根破折の抜去歯は魚の一夜干し用「背開き」と似ていると思いませんか?
左初診時、右抜歯後1年のデンタルX-Pです。
右上犬歯根尖付近の透過像が全く消えません。デンタルでこのようにみえると実際はどうなっているのだろうか?数年前、臨床歯科を語る会の骨梁像の分科会で横浜の丸森先生がシェーデルを切ってみてレントゲンと比較すする、というとってもアナログでオタクな実験結果を披露されたことがありました。
今回3DCT画像からそれを裏付けることができました。
左上右上左下右下の順に歯頸部から根尖方向です。根尖をこえると頬側で穿孔が、さらに深部では口蓋側に穿孔が起こっているのが確認できます。デンタルでは不明瞭な左上1根尖病変が意外に大きく骨が欠損していることも偶見所見です(黄色矢印)。さらにボリュームレンダリングでもこのとおり。
'09 2.25記事「侵襲性歯周炎(?)3症例」の中の3例目の治療経過です。
補綴してある3前歯は連結してありました。右上1は保存がかなり厳しいとみえるものの切断して1歯抜歯となれば残りの2歯もさらに悪化することは必至。1.多数歯をまきこんでのロングスパンのブリッジ 2.可撤式義歯 のいずれかの選択を余儀なくされるかと思います。両隣在歯ともすでに歯冠歯根比の悪い歯周病罹患歯なので予後不良は間違いない。VirginTeethを切削しても道連れになって「死なばもろとも」。義歯にしても見た目が悪いだけでなく緩徐な抜歯装置となりそう。いずれにしても欠損の拡大は眼に見えています。さてどうしましょう。こんなときは急いで見切りをつけず、じっくり基本治療に励むのです。
上は初診時、下は6か月後。根尖をこえる骨吸収にみえていた歯槽骨が安定してきました。まだまだ治療途中で予断は許しませんが、ブリッジも義歯も不要となるようです。
4/8は、まきの歯科医院23回目の開業記念日。今日は他にもよい症例をいくつか確認しました。追々ご報告します。
左下臼歯部の断層撮影。左から右に「567部
舌側にアンダーカットがあることがわかりますが、あくまでも1断面にすぎないため形態がつかめません。それがボリュームレンダリングで処理するとご覧のとおり。
スタディーモデルでは顎堤幅が十分あるように見えて(水色矢印),実は落とし穴(紫黄緑矢印)があることがイメージできます。さすがにデンタルXーPをいくら深読みしようとこうはいきません。例えばここにデンタルやパントモだけみて骨があるものと誤解して長いインプラントをいれようとしたら、、、。
3DCTから得られる立体画像を、デンタルを「読む」ことでイメージできる眼を養いたいものです。
下顎骨のなかで下歯槽管とオトガイ孔の位置関係
上顎洞の形態。デンタルに写る2本の線はどこを示すのか
両者を見比べながら確認することはもちろん大切です。
咬合性外傷(2007 12.27)でレポートした症例です。
原因歯が2なのか3なのか、また2のエンド病変にもみえます。でも何度EPTを試しても生活歯なのです。
そこでマイクロCTを撮ってみるとこのような画像が得ることができました。
犬歯近心頬側の骨欠損が大きいためデンタルXPでは側切歯にかかっているようにもみえますが、やはり原因歯は犬歯でしかありません。無用な抜髄をせずにすみました。
右上犬歯にフィステルです。舌側にためらい傷のような小さな充填はありますが、EPT+_でイマイチ不明。エンド病変かペリオか視診、デンタル、プロービングでははっきりわかりません。
3DCTをみると一目瞭然、何のことはない根尖病変が唇側に波及していました。
3次元である骨を2次元のデンタルx−pにするとき、グラデーションがあれば頬舌的にレベルの違いがあることはわかりますが、それがどんな範囲で高低差があるのかはCTでみれば一目瞭然です。これを重ねることでデンタルx−Pを「読み取る」眼を養いたいものです。
左上〜右下に向かい1mmスライスですから、4mmとかなり狭い範囲で高低差があることがわかります。