初診時30代男性。「歯並びを治したい」が主訴でしたがプロービングデプス全顎8〜9mmの重度歯周炎でした。歯周治療後全顎pd2~3mmに改善を確認、矯正治療は専門医山田秀樹先生にお願いしました。
矯正治療が終わりました、といわれても上顎犬歯遠心にスペースを残す、やや控えめな歯牙移動、、、それが私の眼には物足りなく思ったものでした。しかし経過を観察すること初診から5年、骨レベルは安定し歯肉はタイトに引き締まってプローブははいらないばかりか付着歯肉が増大してきました。良好な経過から矯正専門医の適切で妥当な判断だったといえます。さすがです。
急発〜挺出〜咬合性外傷 で上顎前歯は抜けそうでしたが、なんとか助かりました。右上1右下2近心のX-P像に注目ください。動的治療期間2年弱ですからまあまあでしょう。
今回の連載には間に合わなかったため治療経過詳細はいずれ別の機会に。
以前ご紹介した重症例の初診時の正面観とデンタルです。
歯肉の激しい腫脹疼痛発熱のため摂食困難となり入院、点滴栄養補給された方です。
'08 9主治医の紹介で当院に来院されて以来、さすがに熱心にプラークコントロールに取り組んでいただきました。'08 9~'10 2のプロービングデプスの変化です。青は6mm以上、赤はBOPを示しています。
「PD6mm以上は歯周外科」というのがEBMだそうですが、EBMってのもあまりあてにならないことがわかります。そしてこの間の上下前歯部のレントゲン像の変化です。
初診時右上1左下1はすでにに根尖をこえて骨がないようにみえますが、1年半経過し骨が戻ってきました。抜歯の前に当院に来られて本当によかった。
歯科医である息子さんの勧めで来院された60代男性、根尖まで骨吸収の重度歯周炎。
下はこれまでに何度もご紹介しているケースです。年齢重篤度ともとても似ています。異なることは、今回の症例は歯が動くからといって近医にてスーパーボンドで固定されたことです。左上1右上3は隣在歯にぶら下げられていますが保存不可能。
「歯の動揺がひどい(がどうしていいのか分からない),とりあえず隣とつなげて固定しておきましょう」は悪化させてしまい本当に困ります。
侵襲性歯周炎治療経過その3です。
右下3のみすっきりせず、レントゲン上で何やら怪しい像、、、
フラップをあけてみると、犬歯なのに複根、そこまで骨吸収が進んでいました。
こんなときこそ再生療法の適応なのかもしれません。
侵襲性歯周炎は、1999年にAAP(アメリカ歯周病学会)により発表された歯周疾患の最新分類での名称です。日本ではまだこの呼び名が徹底されていないので、若年性歯周炎と呼ばれることもあります。
1.30歳代男性 プラーク歯石沈着が著しいが、モチベーション良好
2.同じく30歳代男性 プラーク歯石ほとんどみられないが骨吸収が著明 これは難症例
3.40歳代女性 強烈な炎症で摂食困難身体衰弱し数週間入院治療をうけたとのことです。
いずれも他の医療機関からの紹介にて来院し現在慎重に治療中。3人とも順調に経過しています。いずれ経過報告いたします。
それぞれ別の医療機関からの紹介であいついで来院された2人の重度歯周病患者さんです。
30歳代男性
40歳代女性
ふたりとも前医の前に複数の医院を受診したそうですが、私としては「抜け落ちる前に当院に紹介いただいてよかったね~、一本でも多く残しましょうね」というところ。
30代男性には驚きました。カウンセリングの翌週、「初診時」の口腔内写真を撮影しようとしたらもうすでにピッカピカに磨かれているではないか!「ここでダメなら後がないと思って必死です。こんなことならもっと早くから歯磨きすればよかった」とはご本人の弁です。歯周治療はなんといっても患者さん自身のモチベーションとその持続が最重要。あとは術者のスキルを発揮するだけ。
全治2年くらいでしょうか。がんばっていきましょう!
当院で歯周治療ののちメインテナンス10年以上継続している患者さんのなかで「初診時の状態ワースト10」の資料を集めてみました。
これら全て初診時のプラークスコア80%以上、プロービングデプス7mm以上が50~60%、4mm以上なら80%をゆうに超える重症例ばかりです。最年少は初診時37歳(これは侵襲性歯周炎もしくは急速進行性若年性歯周炎でしょう),その後18年のメンテナンス,というケースをはじめ、皆、私の歯科医としての想いを込めて治療、メインテナンスを続けてきた重症例ばかりですから細かい数字はともかく患者さんのプロフィールや治療経過、口腔内の状態等は空でいえます。当然、初診時は悪くても全て現在は良好な経過をたどっています。
資料を全てインプットするというひどく単調で煩わしい仕事を終えてあらためて眺めてみていたら、、、10症例の平均年齢は「47歳(!)」なのです。記憶に残るほどの重症例の初診時年齢が想いの外に低く、これは驚きでした。ついつい自分の年齢と比べてしまうのかもしれませんが、まれに見る重症例の歯周病はすでにこの年齢までには進みきっている、ということなのでしょうか。あるいは比較的若くして重症であることが重症たる所以なのかもしれません。
これらの詳細についてよくよくみれば何らかの形でひとかたりできるかもしれません。
左上犬歯近心の骨欠損です。
EPT+.プラークコントロールが非常に良い方で赤染めではほとんどどこも染まりません。
ブラキシズムによる外傷と診断し、スケーリング、ルートプレーニングは一切せずナイトガードと自己暗示療法による外傷のコントロールを試みました。
初診と3ヶ月後の比較です。骨が少しずつ戻ってきました。