「臼歯部へのアクセス」もひとつのハードルなんだそうです。
そんななかの1症例。
1.初診:強い炎症、深いポケット、浮腫性歯肉
2. 3ヶ月後「乾いた歯肉」に(炎症の消退)、SRPの開始時期!
3.probeはいりません。やれやれ。メンテ移行
4.リコールでびっくり!いつの間にクラウン!なんで???
風邪気味になったとき36がしみるようになったのが不安になり、でもその日当院休診、、で休日当番受診したそうです。即、抜髄になり流れでクラウンになったんだそうです。
何てことしてくれるんだ〜!!
「歯根露出でPC精度が低下した際、冷水痛が生じることがあります。そんなときは慌てず騒がず、もう一度PCを見直してみましょう。大半は消失しますから(抜髄なんてしたらダメよ!もったいない)!」 という講演を今週末の東京でしてきます。
私が大学生だった'83~4年頃の実習書(これは同級生に借りたもの)です。セピア色の表紙が30年の年月を物語り,それはそれで感慨深いです。当時「歯周療法」といえば「動揺する歯をいかに固定するか」に終始していたようです。
表紙を広げ目次をみると、、、
*「歯齦切除手術」(いまどうかは知りませんが歴史と伝統の東京歯科では、歯肉は「歯齦」、歯肉頬移行部は「齦頬移行部」、セメント質は「白亜質」、エナメル質は「琺瑯(ほうろう)質」と称した)
*「金属線結紮固定法」*「塗蝋絹糸結紮固定法」*「A-splint」、、、。
すなわち実習のほとんど全ての時間を費やしている「歯周療法」の手技といえば「固定法」なのです。それが当時のEvidenceだったのかもしれませんが、こんなことでは大学病院では歯周病は治せない不治の病だったでしょう。
Lindheの教科書(英語版)の初版がこの翌年あたり。またその当時の長野県で、症例の観察から「歯は動く」(だから固定してはいけない)ことが見いだされたことは今世紀最大の大発見なのです。
オーストラリア在住のMさん(30歳女性)から「歯周治療希望」というメールが届いたのは'09 10月でした。「オーストラリアの歯科で侵襲性歯周炎の診断をうけました、前歯が抜けそうで怖い、11月から2ヶ月あまり富山の実家に帰るからなんとかしてください」「おいおい、歯周治療ってすごく時間がかかるんですよ、侵襲性Pだって!?そりゃ無理でしょ、何?今マレーシア旅行中?そんなのやめて早く帰って診せて〜、『イ〜』って自分の口元写メ撮って添付できない?レントゲンもらったのならそれも撮って添付して〜」なんてやり取りを経て11月に帰国しすぐ来院されました。
さすが世界を股に活躍されている翻訳家、頭の回転も理解も良く,充分なモチベーション.
でも脱兎のごとくこんな短期間で歯周治療が進んだのは異例中の異例です。
レントゲン上で骨に変化が見られるにはまだ時間がかかりますが、出血は全てなくなりPDも安定しました。これからロンドンに住まわれるとのことで、旅立ってゆかれました。問題はメインテナンスです。英国の歯科事情は全く知りません、うまく継続維持できればいいのですが。
左下5近心に垂直性骨欠損が認められます('94 10)。外傷の除去〜自然移動で大きく遠心へ移動し、ポケットがなくなりました。しかし56が近接しこれでは補綴が不可能なため、MTMを行い連結冠を装着し、保定と固定を行いました。
メインテナンスが続いています。13年後である現在です。炎症の再燃はありません。
歯槽骨頂線、歯槽硬線ともに明瞭なうえ骨梁像も安定しています。
咬合性外傷によるいわゆるすり鉢状骨欠損(四壁性骨欠損)でした(1995年)。
便宜抜髄をして自然挺出をはかりました('95 4~'96 4)。
骨欠損はなくなりプロービングデプスも2mmとなりましたが、歯冠歯根比が極端に悪いです。
「このあとどれだけもつか」と批判もありました。しかし患者さん自身のプラークコントロールはずっと続いており、リコールも継続されています。初診から12年後最近のレントゲンです。
煙草が健康に煙草がよくないことを子供でも知っています。空港、駅などでも喫煙者は煙突の下みたいな肩身の狭い場所に追いやられています。いまや世界の常識なのです。歯周治療にも歯周外科にも悪いことはわかっているので患者さんご自身が禁煙してくれなければ我々歯科医には責任が負えません。煙草をやめてもらうことも歯科医の仕事のひとつです。「そんな堅いことばかりいって」なんていわれてもしょうがありません。
私も、患者さんに禁煙を勧めるにもかかわらず自分の指がヤニ臭ければ説得できまい、と自己暗示をかけ全く吸わなくなってから10数年経ちました。
ところである方の禁煙前後の歯肉の変化をみてください。3箱/日のヘビースモーカーでした。
煙草と歯周病の関連をご説明しました。
1. ニコチンが歯周病原菌と戦う白血球の遊走阻止
2. 歯肉の線維化
3. ヤニが歯についてプラークが停滞しやすくなる
よく納得いただいたご本人の努力で禁煙に成功しました。後日私たちに数々の名言を残してくださいました。
1.「最近急に歯磨きするようになったし煙草やめた。『健康オタクになってどうしたの?』と職場で言われています。」
2. 「禁煙はじめた頃は辛くて辛くて、、、。灰皿のにおいを嗅いで紛らわせました」(これはすごい!)
3. 「(まきの)先生のおかげでハワイにいってきます。毎日1000円くらい吸ってましたので月に30,000円。半年で、、、、。煙草やめたらハワイなんか安いもんですわ」(でもこれは「煙草はやめない。肺癌で死ねば本望」なんていうひとにとっては些細な話でしょう「ハワイがどうした」といわれればそれまでの話。)